負債と将来の義務 一歩くわしく
資産除去債務しさんじょきょさいむ
将来の「片づけ義務」を、今から帳簿にのせる
ひとことでいうと
借りた場所に機械を置き、「使い終わったら自分で片づける」と約束したとします。支払いは未来でも、片づける責任はもうあります。その責任を今の帳簿に記録したものが資産除去債務です。
使い始めるときに、片づけの約束がある
お店が場所を借りて、大きな機械を置いたとします。契約には「使い終わったら、機械を外して元どおりにする」と書かれています。片づけるのは2年後でも、約束は機械を置いた日に始まっています。
会計では、この約束を支払日まで隠しておきません。将来お金を払う責任を、資産除去債務という負債にします。そして同じ金額を、設備という資産にも加えます。片づけまで含めて、この設備を使うために必要な負担だからです。
対象になるのは、建物や機械などの固定資産を手に入れたり、建てたり、ふつうに使ったりしたことで生まれる片づけの義務です。法令や契約で決まった義務などが当たります。「いつか店をきれいにしたい」という希望や、日ごろの修理代を何でも入れるわけではありません。
図1では、機械を使い始めた日に片づける義務が生まれ、金額もきちんと見積もれるとします。まだ金額を合理的に見積もれない場合は、見積もれるようになった時点で記録するルールです。
2年後の121万円は、今も121万円?
将来払う121万円を、そのまま今の負債にはしません。たとえば、今の100万円を年10%ずつ増やすと、1年後は110万円、2年後は121万円になります。この関係を逆向きにたどると、2年後の121万円は今の100万円に当たります。将来のお金を今の金額へ置きなおすことを割引、置きなおした金額を現在価値といいます。お店のセールで値段を下げる話ではありません。
最初に、資産と負債を同じ額だけ増やす
2年後に払う金額を121万円、時間の違いを計算する割合を年10%とします。121万円を1.1で2回割ると、今の金額は100万円です。最初の仕訳では、資産除去債務という負債を100万円増やし、設備の金額も100万円増やします。この日に撤去代を払うわけではありません。
年10%は、計算を追いやすくするためだけの仮の数字です。この割合を「割引率」といいます。実務でいつも10%を使う、という意味ではありません。基準に沿った利率、撤去する時期、支払額を根拠をもって見積もる必要があります。
その後の費用は、2つに分かれる
設備に加えた100万円は、使う年数に分けて少しずつ費用にします。この処理が減価償却です。ここでは残り2年、最後に残る価値はゼロ、毎年同じ金額に分けると仮定するので、年50万円です。機械本体の購入額は、この図に入れていません。
負債は、支払日が近づくにつれて121万円へ近づけます。1年目は100万円×10%=10万円を足し、110万円にします。2年目は110万円×10%=11万円を足し、121万円にします。これを「時の経過による調整」といい、足した分はその年の費用です。
2年後、見積もりどおり121万円を払ったら、記録していた資産除去債務をなくし、預金を減らします。実際の支払額が違えば、差額の処理も必要です。図の金額は万円単位で、計算の途中に端数は出ない例です。
積立預金や、最初の全額費用とは違う
負債を帳簿に書いても、片づけ用のお金が別の銀行口座へ移るわけではありません。将来の支払いに備えてお金を用意することと、会計で義務を記録することは別です。
また、最初の100万円を一度に全部費用にはしません。いったん設備の金額に加え、使う年数に分けます。借りた物を使う取引には、使う権利を資産として考える使用権モデルなど別のルールも関わります。原状回復や敷金の契約も一つずつ条件が違うため、この単純な例をそのまま当てはめず、契約と会計基準を確認します。
仕訳で確かめる
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 設備(固定資産) | 100 | 資産除去債務 | 100 |
ここまでのおさらい
将来の片づけ義務を負債に記録し、対応する費用を設備の金額に加える。現金の準備とは別に、設備を使う期間の負担を表す仕組みです。
出典と確認状況
説明の範囲
日本基準。自己所有の設備について取得時に生じる契約上の撤去義務の基本処理。リース・敷金の特例・税務は対象外。
- ASBJ:企業会計基準第18号 資産除去債務に関する会計基準第3〜9・15・17〜20-2・24・28項
- ASBJ:企業会計基準適用指針第21号第3・4・6・9項、設例1
公開対象判定:独立レビュー通過・所有者による公開承認済み
撤去義務の有無・合理的な見積り・割引率は例示の仮定。実在契約への適用、敷金・リースの特例、税務は未判定。
一般的な学習のための説明です。個別の会計処理は、適用する基準と契約・取引の事情に合わせて判断してください。